骨髄幹細胞が人間の骨髄中にある造血性細胞であるのに対し、es細胞は、受精卵の一部から作られる細胞です。
es細胞は、「胚性幹細胞」の英語表記の頭文字をとって命名されており、人間の体のあらゆる細胞になることが可能であることから、「万能細胞」とも呼ばれてます。
受精卵が何度かの分裂・増殖を経て成長した胚の中に存在する、まだどのような細胞になるかが決まっていない若い細胞で、胎盤以外のすべての臓器、神経・血管・皮膚・脂肪などを作り出すことが可能だということがわかっています。
視細胞から網膜組織を作ることもマウスを使った研究で成功しており、es細胞から作られた人口網膜を失明した患者に移植する再生医療の可能性も見えてきています。
es細胞はほぼ無限に増殖できるという高い増殖能力も持ち合わせており、遺伝子にさまざまな操作を加えることが可能なのです。
基礎医学研究分野ではes細胞の持つこの特徴を生かして、特定遺伝子を意図的に破壊したり(ノックアウトマウス)、特徴のある遺伝子を自在に取り入れたり、薬剤の選別や開発の参考にしたりなど広く研究に利用しています。
es細胞の培養に成功したのは1998年のことで、現在、心筋梗塞・パーキンソン病・脊椎損傷・糖尿病・肝臓病などの病気の新しい治療法として世界中で研究が進められています。
ただし、人間の受精卵を使うことで倫理的な問題も指摘されているため、臨床に用いるまでには、まだ乗り越えなければならない壁が数多く残されていると言えるかも知れません。